デジタル作画について...はじめに

  • 2019.01.25 Friday
  • 01:57

おはようございます。制作の白石です。

 

最近、「デジタル作画の現場を見たい」と、経験者の作画さんがスタジオへ遊びに来る事が増えました。

中には、そのまま席を置いて「覚えたい」と弊社作品に参加して下さるスタッフさんもチラホラ…。

ここのところデジタル作画の本が出たり、デジタル作画ツールのマニュアル公開があったりと、皆さんデジタル作画に前向きな対応が始まっているようです。

 

弊社も、完全にデジタル作画に切り替えたのが2016年5月のこと。もうすぐ3年目となるので、3年一区切りと思い、今年一年、弊社のデジタル作画についても、少しずつまとめていきたいと思います。

 

…とは言いつつですが、私自身は制作で経営者でもあるので、まずは技術論は後に回し、アニメのフローについてちょっとまとめてみようかと思います。

 

私がアニメ業界に足を踏み入れたのはうろ覚えですが、確か1999年のこと。
当時は作打ちが終了すると、作画さんはLo作業という作業に取り掛かかるのが普通でした。

Lo作業というのは、美術の元になるBG原図とセルの配置等を描き起こし、絵のおさまりを作る作業です。

作監が入れやすいようにと、各キャラ1枚位は、現在のラフ原程度の絵の密度で描かれている場合もありましたが、パース線と木偶人形に近いキャラが置かれているようなLoもありました。

そういった密度のものですから、他社作品と掛け持ちしている作画さんでも、1日のLo上りは平均して3〜5カット。早い人だと1日10カット近くは上がっていたと記憶しています。
演出さんが確認するのも、まずは絵のおさまり。それからBG原図。絵コンテの意図を組んだアングル・セル配置になっているか。打ち合わせで発注した内容はクリアされているか。そういったことでした。

OKのものは作監に回し、NGのものはリテイクの指示を出す・もしくは作監に相談に行く(本人に戻さず、作監に修正して貰う)。そういった作業をして、1日平均20〜30カットはチェック上りが出ていたと思います。

その後、他作品の現場へ向かっていた演出さんも多かったのですから、1日のチェック物量としては、実は、倍の50〜60カット位は確認が出来る作業だったのかも知れません。(作画出身の演出さんは、比較的凝り性な方が多く、NGのものはリテイクではなく自身で修正を入れ作監に回す為、作品を1作品に絞り、それでも1日20カット前後は見ている…というような方が多かった気がします。)


作監さんの仕事は、作画全般。

演出指示に従い、BG原図、絵のおさまり等をザックリ修正。

作画スタッフさんの技量によっては全描きなおしの場合もあれば、部分修・無修正の場合もあり、作画担当者によってバラつきがあるのが普通でした。

「動きは原画時〜」という作画さんも多かったのですが、原画に入る前に作監のアタリが欲しい作画さんは、ザックリ動きのアタリを入れ、作監を入れて欲しい箇所に比較的しっかりした絵を入れてきます。

そういう箇所へはラフ時にしっかり絵を入れて戻せば、原画時、絵を合わせて貰えるのでチェックが楽。

原画時に枚数が増えそうなカットは要所に数枚修正を入れるとか、止めに近いものは原画時修正に回すとか……

当時は、一人の作画さんが20〜30カット程度を作業し、Loを描いた作画さんが原画をするのが当然の事。

ですからLoが上がり始めると、「誰々さんを優先に」と戻しを作って貰い、作画スタッフを手空きにしない、という事を優先に、戻しの出し方をスケジュールに合わせて調整頂いていたように覚えています。

 

 

このワークフローが崩壊を迎えたのは、実はあっという間のこと。。。
1997年頃に年間80〜90本程度の制作本数だったアニメの本数は、私が制作の仕事を始めた1999年には年間150本近い制作本数になっていました。「こんなに増えたらまずいでしょ」と懸念するスタッフもいましたが、私自身はアニメが大好きで、忙しくて見れないからとビデオを3台も回して録画していたり、外回りの時間を好きなアニメの時間に充てて、車内のTVを見ながら外回りをしたり、「アニメの本数が増えるのは元気な証拠でしょう!」と無邪気に喜んでおりました。
ですが、アニメの本数増加は天井を知らず、だんだん上記スタッフの懸念通り、作品本数と作画スタッフの数がかみ合わなくなっていきます。

 

当時の上司には「頭を使えば仕事はもっと楽に、良いものが出来るはず。頭を使え」とよく言われたものですが、2001年〜2002年で放送していた『サイボーグ009(平成版)』という作品の進行をしていた時のことです。

演出・作監が助かると言っているフリーの作画スタッフさんに「ディティールアップは社内でするので、Loと一緒にセルの動きを作るところまでお願い出来ませんか?」とラフを大量に取って貰う流れをその上司が作って来のです。

その時は本当に、「頭を使って仕事をするってこういうことか!!」と感心したものでした。

こうなると、作画さんの作業はLoだけではなく、セルワークと芝居をしっかり組み立てなければいけない訳で、1日の生産量は当然下がります。

1日2〜3カットが平均。早いスタッフが5カット前後。

このスタッフさんにお願い出来るのであればとスケジュールもギリギリまでこじあけて、原画作業だと30カットまでのところを、60〜70カットのラフ原作業に切り替えて貰い、原画は社内で二原のシステムを作って…というような感じでした。

当時は「ウチの上司って凄い!」と感心していましたが、一人が考える事というのは、考える人はだいたい同じ事を思いつくもので、ラフ原システムはあっという間に制作体制として定着しました。

ただ当時は、一人一人の1日生産量が落ちつつも、少ない人数で発信し毎日カットが動いていくという事でチェック工程のスタッフが使える時間も増え、全体的に丁寧な作品創りに寄与出来る方法としてのシステムだっだと思います。

作品本数が増えつつも、この時期、高いクオリティの作品が増えていったのは、こうした流れの一環だったのではないかと、私見ですが勝手に想像しています。

 

そして同時期、仕上げ〜撮影のデジタル化が始まりました。
2001年放送の『まほろまてぃっく』12話の進行をしていた時に、1カットだけセル仕上げが間に合わず、急遽デジタル仕上げで作業をして貰ったカットがありました。

2002年放送の「まほろまてっぃっく〜もっと美しいもの〜」では既にデジタル作業に切り替わっていたので、丁度過渡期の頃だったんですね。

その一カットはDVDではセル仕上げに修正をしたので、覚えていらっしゃる方がいるかどうかはわかりませんが、当時のデジタル仕上げ〜撮影では、若干光の黄色が強く出てた記憶があります。

白箱を見た時に罪悪感があって、「ごめんなさいごめんなさい」と謝ってはスタッフに慰めて貰った記憶があります。

既にビデオの再生機が使えなくなっているので確認も出来ないのですが、スタッフ全員でラッシュを確認して、話数ごとに打ち上げと反省会をしていた頃の話でした。

 

さて、それから更に数年が立ちます。

テレビシリーズの制作本数は年間150本ではとどまらず、ついに年間200本の大台を越えました。

60カットラフ原をお願い出来ていたスタッフも、作監へ切り替わったり、もしくは別作品との掛け持ちが入って担当数が減少。

結果、ディティールアップをお願いしていた社内スタッフにも、ラフ原作業をお願いする事態となりました。

そして、それはつまり、ディティールアップをお願い出来るスタッフが、社内の顔の見えるスタッフではなくなったということです。

作画さんは、ラフ時に作監をしっかり入れて貰う事を前提に、比較的しっかり設定に合わせたラフ原を描いてくださるスタッフが増えました。

但し、当然ですが、丁寧に描く分生産量は下がります。1日平均1〜2カット。早いスタッフが3カット。
演出の確認箇所は、スケジュール遅延により絵素材と一緒に音響対応が必要になり、原図・絵のおさまりの他、芝居・表情・タイミング・セル分けの確認・台詞・SE指示等が必要になりました。

確認箇所は、当初の倍ではききません。

当然チェック上りの数も半分以下の平均10〜15カット。
作監は二原スタッフの技量がわからないので、神経質な作業になり、1日の生産量は平均5〜8カット。
「これでは回らないぞ」と監督チェック、アクション作監チェック、メカ作監チェック、総作監チェック等、得意分野で別のスタッフに任せて貰う為のチェック工程を立てて、チェックを分担。

 

実は、これらが全て自社の抱えるスタッフのみで構成出来ていたGAINAXでの制作時代は、凄くスタッフに恵まれていた幸福な時代でした。

 

そして2013年。

私が「一から新人を育成する場として会社を創りたい」と創った会社は本当に小さな会社で、メインスタッフは当然、全て社外のスタッフから始まります。そして気づいたのは形式としては同じ工程を通しても、社内・社外にバラバラに居るスタッフに、制作が仲介して作業をお願いするというのは、メインスタッフを全員社内スタッフで固めているというのとは明らかに内容が違うんだという、当たり前のことでした。

よく考えれば当然のことなのですが、アニメのフィルムに携わるスタッフの皆さんはアニメを好きで従事しています。自分が全力をかけたかいのある作品を創りたいし、それには見てくれるお客様が喜んでくれる作品にしなければいけません。

ですから先工程のスタッフの顔や技量が見えない以上、自分の出来る精一杯で、自分の担当カットに取り組んで下さいます。

メインスタッフと呼ばれる方は、その中でも当然巧いと言われるスタッフさんが抜擢されている訳で、当たり前ですが目も肥えていますから、多重チェックによる頭でっかちのチェックフローが完成しました。

 

さて、その延長線上にある『二原動仕』という言葉を御存知でしょうか?

つまり、作画さんに上げて頂いたラフ原を、多重のチェックを終えて原画さんにお願いする頃には、スケジュールが全くなくなっているのです。その結果、原画時には多重どころか演出・作監のチェック工程も入れられない…という事態です。

「そんな作品の創り方は許さない」と言える会社は、本当にスタッフが潤沢に居る制作会社で、最終話近辺になると、多くの会社が使っている手法なのではないでしょうか。。。

 

Loシステムがラフ原システムに切り替わっていく変遷は、私自身の目の前で、上記のような経緯をもって起こりました。(アニメスタッフすべての集計を取っている訳ではないので当てはまらない方もいるかと思いますが、私自身の担当したカット表は全て残しているので、大枠での数字は参考になるのではないかと思います。)

それではLoシステムはどうして出来たのでしょう。。。
初期のアニメーションは「一発原画」で作業をし、問題のあるカットはリテイクで作業者に戻されていた…という話は、私達の年代では、比較的有名な話です。

それを『母をたずねて三千里』で、TVシリーズ全話のレイアウトを宮崎駿さんがおさえようとした結果、構築されたのが「レイアウトシステム」という話なんだとか。

ただそれも、社外スタッフの作画さんにリテイクを返すよりは先に進めて欲しいという事だったので、日本アニメーションの社内では、当時の通常工程「一発原画+問題がある場合は本人にリテイク」というフローで進められていたと聞いた記憶があります(こちらは聞きかじりなので間違っていたらすみません)。

私が制作初期に「当たり前の作り方」と習った「レイアウトシステム」というのは、1976年のその現場から、少しずつ広まっていった作り方だったのではないかと思います。

 

そんなこんなで、私が作画のデジタル化に着手する時にまず考えたのは「新しい技術を入れる事をきっかけに、新しいフローを構築すべきだ。」という事でした。
そして、どうせ新しいフローを模索するなら、『デジタル化が進み、個人制作が出来るこの時代に、一つの場所に人が集まる事自体にも意味を持たせられるフローを構築したい。』と思いました。

 

制作プロデューサーという立場だけではなく、『ミルパンセ』という会社を経営するようになり、『会社』という『場』も含めた模索をしながら、前向きに取り組んでいるのが、今のミルパンセのデジタル作画化です。

 

ここで書いた事が誰に届くかはわからないのですが、最近ブログを読んで門戸をたたいてくれるスタッフも増えてきたので、ひとつ言いたくて『はじめに』を書きました。

 

折角新しい技術へ挑戦するのであれば、コレを機に、新しく、より良いワークフローをみんなで模索しませんか?

 

制作:白石でした。

 

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